日本国憲法が将来にわたって、日本という国の「土台」であることを肝に銘じ、その上で憲法のどの部分をどのように変える必要があるかを丁寧に検討するというのなら納得もできるが、この間の憲法論議は荒すぎるのではないでしょうか。
日本国憲法は平和と人権に関する理念を浸透させるために、戦後大きな役割を果たしてきました。集団的自衛権の行使は認められないという歴代内閣の方針を変えるにはもっとていねいな手順を尽くすべきだったし、課題が山積している中でなぜ今憲法改正なのか、よく分かりません。
憲法とはある世代、一政権のためにあるのではなく、「われらとわれらの子孫のために」(憲法前文)あるものです。それが憲法第96条にいう「改正」の意味だと理解しています。このように解する根本的理由は、人類の長い歴史に照らし、国・社会の繁栄の持続に最も適したのは「立憲主義」といわれるもので、中でも日本国憲法は現代における「立憲主義」のあり方をよく具現している憲法です。
20世紀の二つの世界大戦という悲劇を経て、現代立憲主義憲法が成立しました。現代立憲主義憲法は、人間(個人)の尊厳を核とする普遍的な人権観念の基礎の上に民主的政治制度を構築するとともに、憲法の規範力を確保するために憲法裁判制度を導入し、さらに平和への志向を明確にするなどの特徴を持っています。
隣国や、日本に多大な影響を及ぼす大国も揺れています。こんな時こそ立憲主義を尊ぶ社会を貫きたいものです。
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