厚生労働省は、1月16日、一部の労働者を労働時間規制の適用から除外し、成果で賃金が決まる新制度の骨子案を労働政策審議会分科会に示しました。同時に裁量労働制の対象も拡大する、規制緩和を盛り込んだ労働基準法改「正」案を政府は通常国会に提出しようとしています。
連合は、「制度がいったん導入されれば、対象者は拡大される」と、導入反対の取り組みを強めています。
現在、労働時間については、「1日8時間以内、1週間40時間以内、それ以上働かせたら残業代を払う」というルールがあります。
しかし、政府は「多様で柔軟な働き方」の名の下に、年収1,075万円以上の労働者を、その労働時間ルールの対象外にする制度を導入しようとしています。
「ホワイトカラー・エグゼンプション」から「高度プロフェッショナル労働制」と名称を変えられても、政府のねらいは同じです。この制度が導入されると、対象となる労働者は、労働時間に関する基本的かつ最低限のルールの保護さえ受けられなくなってしまいます。「いったん導入してしまえば、年収の制限額は下げ、対象者を拡大していこう」という考え方が見え隠れしています。そうなれば、問題となっている長時間労働に拍車がかかります。また、過重労働による精神疾患や過労自殺、過労死等の健康・安全を害する事態を招くことも、明らかです。このような制度の導入は許すべきではありません。
昨年の通常国会で、過労死防止に関する国の責務などを定めた「過労死等防止対策推進法」が成立しました。さすがに厚労省の骨子案でも、健康確保のため、企業に在社時間などを健康管理時間として把握するよう義務付け、長時間労働抑制策も盛り込まれました。しかし、現行の労働基準法下でも、日本で毎年100人以上の方が過労死で亡くなっています。この現実を直視すれば、実効性に疑問があることは明らかです。
いま政府がすべきことは「残業代ゼロ」制度を作り出すことではなく、長時間労働を抑制し、「過労死ゼロ」を実現するための実効ある仕組みづくりです。過労死防止に向け、実効的な長時間労働抑制策を実現すべきです。
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